エバー航空でのCabinCrew死亡事件に関して
- cabincrewproject
- 11月27日
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2025年9月に台湾のエバー航空の機内で、一人の客室乗務員が体調不良を訴え、その後死亡されました。日本の客室乗務員にとっても他人ごとではない事件だと言えます。以下は台湾で10月13日に配信されたニュース記事です。
エバー(長栄)航空の客室乗務員(CA)が先月下旬、体調不良のまま乗務し、今月10日に入院先の病院で亡くなったことが分かった。 労働部(労働省)は13日、同部職業安全衛生署に対し、同社が本社を置く北部・桃園市の労働検査処と共に原因究明を行うよう指示したと発表した。 同部や交通部(交通省)民用航空局によれば、亡くなったCAは9月25日にイタリア・ミラノを出発した桃園空港行きに乗務。乗務中の時点ですでに体調不良を訴えていた。事態はSNSへの投稿で明るみに出た。 (中略) CAの労働組合、桃園市空服員職業工会は同日、フェイスブックを更新し、CAの仕事は特殊な環境とリスクを伴い、夜勤や交代勤務による過労、気圧、紫外線の影響で、免疫が低下したり持病を抱えたりする人も多いと説明。エバー航空は体調不良での勤務を強要していないと強調しているものの、CAにとって休暇取得の制度が厳格なのも事実だと指摘した。 (余曉涵、呉睿騏/編集:田中宏樹) 配信元 フォーカス台湾 中央社 |
また、10月19日の報道では以下が報じられました。
労働部(労働省)は17日、同社を含む国内の航空会社6社を招集して会議を開き、6社は社員の病気休暇や生理休暇の取得を人事評価に反映させないなどの方針で一致した。 (中略) 同部労働条件・雇用平等司(局)の黄琦雅司長は、会議では、従業員が病気やけがをした場合、無理に出勤することを奨励しないことや、心身の健康確保の観点から人事評価やシフト管理の規定を改善する方針などで一致したと説明。各社は従業員が恐れずに休暇を申請できる仕組みを作るにも意欲を示したとした。 配信元 フォーカス台湾 中央社 |
【 日本における客室乗務員の在職死亡と、台湾での対応の違いについて 】
日本でもこれまで、機内や宿泊先で倒れ、その後死亡した客室乗務員について報告されています。しかし、台湾と違い、国(厚労省)が各航空会社を集めて調査を求めたり、会議を行うということはありませんでした。
在職死亡の問題は各社任せで、どの航空会社も死亡が労災扱いされていないことを理由に、「私病であり本人の責任」で終わっています。しかし、亡くなった方について、すべて「私病であり本人の責任だから会社は関係ない」で済むことでしょうか。
台湾での今回のケースでは、今後の対策として、従業員が病気やけがをした場合、無理に出勤することを奨励しないことや、人事評価やシフト管理の規定を改善する方針が出されました。
日本でも「評価賃金制度」があり、病気欠勤等がマイナス評価になるため、休みにくい、無理をして出勤せざるを得ないといった状況があります。FRM(疲労リスク管理)に逆行するこの制度は大きな問題であり、廃止してほしいという職場の声が多数、出されています。
日本でも、台湾のように国が関与し、きちんとした調査を行い、必要な改善を行うことが求められているのではないでしょうか。
【 脳・心臓疾患の労災認定基準の運用について 】
日本の労災認定基準の運用に対しては、下記のような疑問の声が、過労死弁護団や関係者から寄せられています。
現在の「脳・心臓疾患労災認定基準」は、表向きは、労働時間と労働時間以外の負荷要因を「総合評価」するとしていますが、その実態は「労働時間の長さ」の評価に偏っていると言わざるを得ません。
客室乗務員特有の、休憩のない長時間勤務(国内線/近距離国際線)や、休日・休養日の少ない勤務パターン、時差、深夜労働(長距離国際線)、頻繁な移動と宿泊を伴う不規則なシフト勤務、低酸素・低気圧・低湿度などの空中勤務の特殊環境、緊張を伴う長時間の立ち仕事、危険回避責任を負う心理的負荷といった「労働時間以外の負荷要因」が軽視されている実態があります。
定時の到着が求められ、残業が発生しにくい客室乗務員の労働時間は、残業が多くあるような状態ではなく、労働の「量」より「質」の面で負荷が高いのが特徴です。今の労災認定基準の運用では、客室乗務員や運航乗務員、整備士等が脳・心臓疾患により死亡した場合、労災認定を受けにくく、ご遺族が泣き寝入りするケースが多いのです。
このため、名実ともに「労働時間以外の要因」についてもきちんと評価される労災行政が求められていると言えます。




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